日経さんの巨大地震に備える記事から
お国の話ですが各ご家庭に置き換え一考せねば・・・
平時から財政余力確保せよ

政府の地震調査研究推進本部の推計によると
南海トラフ地震の発生確率は
30年以内に70~80%
40年以内に90%であるという。
自然災害は起きてほしくありませんが
どう備えるかが重要ですね。
それは、防災・減災の観点だけでなく、経済面からもいえる。
南海トラフ地震の被害想定は内閣府から2019年6月に公表されており
より被害が大きい陸側ケースでは資産などの被害額が171.6兆円
波及して生じる生産低下や交通寸断などによる経済活動への影響額が合わせて42.1兆円。
この被害額や影響額には、国家財政状況の悪化や株価下落、物価高騰の影響は含まれていないとの事。
巨大な自然災害が起こると民間で大きな損害が生じる。
そのため発災直後に政府は民間を財政的に支援し、財源は大半を国債増発で賄う。
内閣府の「国民経済計算」によると
一般政府の債務残高は1995年度には前年度末比で50兆円増え
2011年度は同66兆円増えた(表参照)。
新型コロナウイルス禍でも発災直後に政府が民間を財政的に支援し
20年度には、政府債務残高は前年度末より61兆円増えた。
政府債務の国内総生産(GDP)比%の上昇幅でみると
これらの年度を除いた1995年度以降の平均は5ポイント程度
表のように巨大災害発生の年には上昇幅が大きくなるようで
大災害が起こると、政府債務残高の増加額だけでも災害直前のGDPの10%程度に達します。
災害に伴いGDPも伸び悩むから、債務のGDP比はさらに大きく上昇。
巨大災害後には復旧・復興需要が生まれ、経済活動が活発になってGDPが大きく増えるという期待もあろう。
増税しなくても税収が多く入るなら、政府債務のGDP比はむしろ低下する。
だから災害対応で国債増発をためらうな、という声もあるようですが
現実には阪神大震災や東日本大震災の後、政府債務のGDP比が低下するほどGDPが増えることはなかった。
加えて、膨らんだ政府支出の規模は、復旧・復興事業が終わってもその分だけ減るということもなかった。
財政支出の規模は巨大災害発生前の水準に戻らないどころか、拡大している。
実際にコロナ対策が終わっても、こども予算や防衛費などで政府支出はさらに膨張し始めている。
こうして巨大災害が起こる度に政府債務のGDP比は一段と上昇し
復旧・復興が終わっても財政支出の規模は拡大し続ける。
今後も同じように、巨大災害の発生直後に政府が借金をして
民間を支援することが続けられるのだろうか?
もはやこれまでの巨大災害の発生時にあった条件が失われており
困難さが増していると言わざるを得ない。
過去の巨大災害の発生時にはデフレ(ないしはディスインフレ)
高い失業率、低金利という条件があり、政府債務が多少増えても
国民生活に重大な支障を来さないようにできた。今はもはやそうではない。
まず、22年以降の物価高でデフレが常態化する経済環境ではなくなった。
復旧・復興のために財政出動をすれば、それが物価の上昇要因になる。
過去の巨大災害の発生時には顕著なインフレにはならなかったが、今後はその保証はない。
発災直後にはまず経済の再建を図らなければならない。
ただでさえ生産設備が被災して供給が落ち込むところに
財政出動により需要を喚起して物価上昇を助長すると、経済再建に支障を来しかねない。
その上、人手不足も深刻で阪神大震災や東日本大震災の発生時は、表のように失業率は高めだった。
失業者がそれなりにいる状態なら、復旧・復興事業をしても労働力を確保しやすい。
しかし失業率が低くて人手不足ならば復旧・復興事業が滞る。
今後、少子化はさらに進むと見込まれ、
国内産業が相当衰退しない限りは失業率が高まることは考えにくい。
今後起こる巨大災害時に仮に国債が増発できたとしても、人手不足で復旧・復興のための事業の実施が滞りかねない。
事業を実施できても物価高を助長し、経済再建を阻みかねない。
そもそも、今後起こる巨大災害の発生時には国債を増発できるのだろうか。
これまで増発できたからといって、今後もできるという根拠にはならない。
コロナ禍での国債消化状況はその前兆といえよう。
20年度にコロナ対策のため、あらかじめ満期を定めた国債を83.5兆円追加で発行した。
その7割を超える60.9兆円が、1年以下の満期でしか発行できなかった。
2年以下の満期の国債まで含めると69.9兆円と全体の84%を占めた。
20年度に1年債を発行すれば、21年度には早くも返済が迫られる。
もちろん、21年度にその大半を借り換えられたが、過半は2年以下の満期でしか借り換えられなかった。
22年度には、20年度の2年債と21年度の1年債の返済が求められ、また借り換えた。
このように、コロナ対策のために増発した国債の大半は2年以下でしか発行できず
量的金融緩和策の下だったにもかかわらず、10年以上の長期国債はほとんど追加で発行できなかった。
そして短期の国債は、返してはまた借り換えるという「自転車操業」ともいうべき状態に陥った。
しかも、24年3月に日銀はマイナス金利政策も長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もやめ
国債の買い入れ額の減額ペースを見計らっている。
それだけでなく、前述のようにインフレに転じれば、巨大災害発生直後に日銀が特別な対応をしようにも
緩和的な金融政策がインフレを助長しかねない。
巨大災害発生時に短期債といえども発行できれば、財政支援の原資は得られるものの
国債金利は今や上がり始めており、その後に相当な利払い費を要することになる。
これまでの巨大災害発生時のように日銀頼みでの国債の大量増発は、もはやできないのである。
今後の巨大災害の発生に備えるなら
復旧・復興のために必要とする国債増発を
市場を混乱させない規模でできるような
財政運営の余地を平時から確保しておくことが重要である。
発災時には当年度予算のための新発国債と、当年度に満期を迎えて借り換える借換債に加えて
災害対応のための臨時的な国債増発が上乗せされる。
これらを合計した国債が、市場で円滑に発行できるようにしなければならない。
災害対応のための国債増発は事前に制御できないから、当年度の借換債を抑制することが肝要となる。
それは、まさに平時からの国債発行の抑制に他ならない。
新発国債を平時から抑制することは
巨大災害への備えとして財政余力を確保するためにも不可欠なことであるようです