【W杯総括】激闘のオランダ戦を徹底分析!戦術の可変と交代策がもたらした価値あるドロー

みなさん、こんにちは! 北中米ワールドカップ、グループステージ第1節のオランダ戦。本当に素晴らしい、そして胸が熱くなる激闘でしたね!優勝候補の一角であるオランダ代表を相手に2度のリードを許しながらも、驚異的な粘り強さで追いつき、2-2のドローで勝ち点1をもぎ取りました。

負傷による主軸の不在など、戦前は不安視される声もありましたが、蓋を開けてみればピッチ上で繰り広げられたのは超ハイレベルな戦術合戦でした。今回は、この激戦を戦術的な視点、そして両監督の采配という観点から、深く総括していきたいと思います。

前半の攻防:フレンキー封じと3-4-3(3-4-2-1)の機能性

試合開始直後、まず印象的だったのはオランダの出方でした。ワールドカップの初戦という独特のプレッシャーからか、オランダは無理にリスクを冒さず、最初からかなり堅めに試合に入ってきた印象を受けました。

そんな中、日本が非常にうまく対応していたのが「オランダの中盤の心臓、フレンキー・デ・ヨングに仕事をさせなかったこと」です。ここを自由にさせると一気にゲームを支配されてしまいますが、日本は前線と中盤が連動して厳しく監視。フレンキーに前を向かせず、効果的な縦パスを配給させないことに成功していました。

献身性と密なコミュニケーションが支えるシステム

この試合で日本が採用した「3-4-2-1」というシステムは、非常に難易度が高い布陣です。攻撃時には厚みを作れる反面、守備時にはウイングバックの引き上げやシャドーの引き下がりなど、状況に応じた柔軟なポジショニングが求められます。一歩間違えれば、スライドが間に合わずにスペースを突かれる危険性を孕んでいます。

しかし、前半の日本は全員が本当に献身的な守備を見せていました。前線からのプレッシングをハメることで、オランダに狙い通りのビルドアップを許さず、苦し紛れのロングボールを「蹴らせる」展開に持ち込めていました。これは、ピッチ内の選手同士が声を掛け合い、密なコミュニケーションを絶やさなかったからこそ成立した戦い方と言えます。

前半に見えた日本の課題

一方で、耐えながらもいくつかの課題が見えた前半でもありました。オランダも守備時には非常に強固なブロックを敷いて構えていたため、日本がボールを奪ってビルドアップに移行しようとしても、簡単には崩させてもらえません。

さらに苦戦したのが「セカンドボールの回収」です。相手にロングボールを蹴らせるところまでは良かったのですが、そのこぼれ球をオランダの中盤やDFラインに拾われる回数が多く、なかなか日本が連続して攻撃を仕掛ける時間を短縮できませんでした。結果として、前半は0-0で折り返したものの、我慢の時間が長く続く展開となりました。

後半のドラマ:想定内の失点と、久保の戦術眼が導いた同点弾

後半に入ると、試合は一気に動き出します。

セットプレーからの失点、しかし即座の切り替え

後半5分(50分)、オランダにセットプレーから先制点を許してしまいます。ファン・ダイク選手に頭で合わせられたシーンですが、正直なところ、オランダの圧倒的な高さやサイド攻撃の鋭さを考えれば、「セットプレーでの失点は試合前から十分にあり得る」と覚悟していた展開でもありました。

重要なのは、ここからの日本のメンタリティでした。失点にうなだれることなく、チーム全体がすぐに気持ちを切り替えて反撃に移ったことが、わずか6分後の同点劇へと繋がります。

久保建英の「ポジション移動」という隠れた勝因

後半11分(56分)の中村敬斗選手の素晴らしい同点ゴール。このシーンで個人的に最も注目したいのが、久保建英選手のポジショニングの変化です。

本来、久保選手はこの日「右シャドー」の位置に配置されていました。しかし、この得点シーンの直前、久保選手は意図的に左サイドへと流れる動きを見せました。右にいるはずのキーマンが突如として左サイドに現れたことで、オランダのディフェンス陣は一瞬マークの受け渡しに混乱をきたします。

久保選手に相手の意識とマークが集中したことで、結果的に中央から左のスペースにわずかな「歪み」が生まれました。その隙を見逃さず、ボールを受けた中村選手が卓越したシュート技術を発揮。鋭い振りと完璧なコースへのコントロールショットで、目の覚めるような同点ゴールを突き刺しました。久保選手の戦術的なインテリジェンスと、中村選手の個の技術が見事に融合した美しいゴールでした。

オランダの「理不尽な個」と、フラーフェンベルフの推進力

1-1となり試合が振り出しに戻ったのも束の間、オランダが再びその牙を剥きます。後半18分(63分)、サマーフィル選手に勝ち越しゴールを奪われ、1-2とされます。

サマーフィル選手のシュート自体の精度が素晴らしかったのは間違いありませんが、ここで本当に注目すべきは、そのひとつ前のプレーにあります。

中盤のエリアで、日本の守備陣はしっかりとフラーフェンベルフ選手をマークし、2人で囲い込むような形で対応していました。セオリー通りであれば、ここでボールを奪うか、少なくとも前進を食い止められるはずの局面です。しかし、フラーフェンベルフ選手は非凡なフィジカルと個の技術を発揮し、なんと日本のディフェンダー2人を強引にかわして前線へとパスを通してしまったのです。

組織として数的優位を作って対応していたにもかかわらず、それを個の力だけで破壊されてしまい、日本の守備陣は一気に後手に回る混乱に陥りました。世界のトップレベルが持つ「個の理不尽さ」を、改めて突きつけられた瞬間でした。

森保監督のメッセージと、交代選手たちが魅せた「右サイドの破壊力」

再びビハインドを負った日本。しかし、ここからのベンチワークと選手の奮起が、この試合最大のハイライトとなります。

オランダのクーマン監督は、リードを奪ったことで逃げ切りを図り、守備的なカードを切って「5バック」へとシステムを変更してきました。スペースを消して鍵をかけるオランダに対し、森保監督が出した指示は非常に明確でした。

伊東純也×菅原由勢のユニットがもたらした明確な意図

日本の交代選手の中で特に強烈なインパクトを放ったのが、伊東純也選手と菅原由勢選手のコンビです。

この2人が右サイドに投入されたことで、日本の狙いは「右サイドを縦のコンビネーションで完全に崩しにいき、精度の高いクロスを供給する」という極めて明確なものへとシフトしました。伊東選手の圧倒的な縦への突破力と、菅原選手の絶妙なサポート・インナーラップは、オランダの5バックの隙間を確実に切り裂いていきました。

この右サイドからの仕掛けによって、日本は狙い通りにコーナーキック(CK)を獲得することになります。

驚きと執念の同点劇:小川航基の投入と、高さを凌駕したセットプレー

森保監督はさらに、最前線に小川航基選手を投入します。この狙いもまた、完全に的中することとなりました。

正直なところ、ファン・ダイク選手をはじめとする超大型DFを擁するオランダに対して、「クロス攻撃やシンプルなコーナーキックから点を取るのは極めて難しい」というのが、試合を観ていた多くの人の本音だったのではないでしょうか。地上戦で細かく崩すか、カウンターを狙う方が現実的だと思われていました。

しかし後半43分(88分)、その懐疑論を良い意味で裏切るドラマが生まれます。

右サイドからのコーナーキック。そのセカンドチャンスから伊東選手が鋭いクロスを上げると、ゴール前でターゲットとなったのが小川選手でした。小川選手がオランダの屈強なDF陣と激しく競り合ったことで、相手のクリアを狂わせ、その背後に走り込んでいた鎌田大地選手が頭で押し込む同点ゴールが誕生したのです!

高さで圧倒的に不利と思われたセットプレーの局面から、交代出場の小川選手を起点にして泥臭く、そして執念で奪い取ったこの同点弾。スタジアムが揺れるほどの興奮に包まれたこの瞬間は、森保監督の采配の勝利であり、選手の「絶対に諦めない」という強い意志が実を結んだ形となりました。

最後に:このドローが持つ大きな価値

最終スコアは2-2。 試合前は厳しい戦いになると予想され、実際に試合中も2度のビハインドを背負う苦しい展開でした。しかし、終わってみればオランダを相手に真っ向から戦術で渡り合い、勝ち点1をもぎ取りました。

オランダの中盤を封じた前半の粘り強さ、久保選手のポジションチェンジから生まれた1点目、そしてオランダの5バックをサイドから破壊し、高さの不利を覆した2点目。そのすべてに、現在の日本代表が持つ「組織としての完成度」「ベンチメンバーを含めた総力戦の強さ」が凝縮されていました。

強豪オランダから激戦の末に奪ったこの勝ち点1は、今後のグループステージ突破に向けて、単なる「1」以上の巨大な自信と価値をチームにもたらしたはずです。次戦のチュニジア戦、そしてその先へと続く青き侍たちの挑戦から、ますます目が離せませんね!