日経新聞に記載された記事のご紹介
とても解かりやすい内容でしたので転載してみました
「金利上昇に備えるなら、変動型で借りている人はどうすればいいの」と聞くと、店主の黄金餅豊は「金融機関に金利と返済額の変更ルールを確認することが大切だ」と応じます。

新佐初 昨年秋ごろ変動型の金利が上がるとのニュースを聞いたよ。
黄金餅豊 大手銀行やネット銀行の多くが日銀の追加利上げを受けて、2024年10月に変動型の基準金利を引き上げた。借入中の人の適用金利は、今月から年0.15%程度上がるケースが多い。

新佐円 実際の金利変更まで数カ月かかるのですね。
豊 変動型は一般的に半年ごとに金利を見直す。4月1日と10月1日を見直しの基準日にする場合が多い。基準日に見直された新しい利率は2~3カ月後の返済分から適用される。例えば4月1日に見直した分は7月の返済から、10月1日は翌年1月からだ。
円 なるほど。
豊 金融機関は独自に基準金利を定めていて、基準金利から借りる人の収入や物件に応じた優遇幅を差し引いて適用金利が決まる。優遇幅は完済まで変わらないから、借入中の適用金利は基準金利の変動幅と同じだけ変動する。
初 どういうこと?
豊 きょうのサービス「旬の果物100%ジュース・会員割引付き」。旬の果物を使うので定価は変動するけど、「黄金堂・友の会」の会員は常に3割引きだ。支払額も常に変わるよ。
円 基準金利が定価で、優遇幅が割引き幅、適用金利はお客さんが会計で払う分ですね。では、基準金利はどう決まりますか?
豊 各金融機関が目安とする市場金利に一定幅を上乗せして決める。目安の市場金利は、返済能力が高いとされる企業に1年未満の期間で貸すときの金利である短期プライムレート(短プラ)を使うことが多い。銀行間で資金をやり取りする際の市場金利である東京銀行間取引金利(TIBOR)を参考にするケースもある。いずれも日銀の政策金利に左右されやすい。
初 変動型では毎月の返済額の変更を原則5年ごととする「5年ルール」がある銀行が多いと聞いたよ。6年目に返済額が増える場合は25%増を上限とする「125%ルール」もあるよね。
豊 そうだね。毎月返済額は、返済開始から原則5年ごとに見直すかたちだよ。金利が上昇した結果、毎月の返済額が増える時期は人によって違うんだ。
5年ルールが導入されたのは1983年に大蔵省(現財務省)が住宅ローンで変動金利を認める際に出した通達がきっかけだ。従来は固定型だけだったから、利用者の過大な負担を避けるよう求めた。通達は94年に住宅ローンの金利・商品設計の自由化で廃止されたけど、業界の自主ルールとして「金利上昇が家計に与える影響をなるべく抑える目的で継続している」とみずほ銀行では話していた。
初 5年固定のローンを借りているのと同じ?
豊 同じではないよ。5年ルールで変わらないのはあくまで月の返済額だ。月返済額は元金と利息の支払いの合計。金利が上昇すると、新たな利率の適用月から利息の額は増える。でも月の返済額は一定にするから、利息の増加割合だけ元金の支払い分が減る。金利が下落しなければ元金の返済が遅れて利払いがかさみ、総返済額が増えやすい。
円 どれくらい増える可能性があるのかな。
豊 5000万円を期間35年、金利年0.4%で借り、1年後と2年後に0.5%ずつ計1%上がる例でみよう。当初の月返済額は約12.7万円で、約1.6万円が利息、約11.1万円が元金の支払いになる。金利が上昇しても月返済額は5年目まで同じだけど、利払いは2年目が3.6万円、3年目が5.5万円に増える。元金の返済はそれぞれ9.1万円、7.2万円と減る。総返済額は6200万円と、5年ルールがない場合に比べ約24万円多くなる。
円 5年ルールなどがない金融機関もあるの?
豊 ソニー銀行やPayPay銀行などは採用していない。基準金利を見直して新利率が適用される月に返済額も変わる。PayPay銀の住宅ローン担当者は「金利上昇とほぼ同じタイミングで月の支払額が増えるため、家計管理の意識を持ちやすい」と説明していた。
円 金利が上昇しても返済が続けられるか考えないと。
豊 そのためには適用金利や返済額の見直しのルールを把握することが大切だ。住宅金融支援機構が住宅ローンを返済中の人を対象にした調査でルールをどの程度理解しているかを聞いたところ、「あまり理解せず」「ほとんど理解せず」など理解していない人は計51%と過半だった。「ある程度理解」と答えた人は44.1%にとどまった。
初 興味深い結果だね。
豊 ファイナンシャルプランナー(FP)の平井美穂さんは「金融機関が示す返済予定表を確認することが大切」と言うよ。半年ごとなどに更新され、金利上昇の場合はいつから、いくら返済額が増えるかなどが載っているよ。